山縣ゼミの基本コンセプト:実際にやってることと、その考え方。

山縣ゼミのテーマは、「企業行動論・企業発展論:価値創造をデザインする」。ちなみに、昨年までは「企業行動論・企業発展論:企業発展と価値創造」だったので、字面では微妙な変化があります。



ただ、けっこう大きな変化であったりもします。


というのも、すでに何度もここで書いてますように、今年度の第8期から企業とのコラボ企画を始めたからです。今年度は、大阪府主催・大阪労働協会受託の〈大阪府の中堅・中小企業の魅力発見プロジェクト:P-DASH〉にメンバー全員で参加しています。



このプロジェクトについてもすでに書いているので、簡単にだけ。


大阪府内にある中堅・中小企業にインターンシップさせていただき、そのなかで仕事の体験だけでなく、その企業の魅力や強みなどを発見し、それを1分間のプロモーション動画として制作するというプロジェクトです。



このプロジェクトの存在は、近畿大学経営学部の松本誠一先生に教えていただいたのがきっかけです。ほんとにありがとうございます。



大阪労働協会の方からいろいろと伺っていると、「うちのゼミにとっては、まことにちょうどいいプロジェクト(にもっていけそう)」という感覚がむくむくと湧いてまいりました。



なぜなら、うちのゼミでは企業を〈価値創造〉〈価値交換〉〈ビジネス・リーダーシップ&マネジメント〉の3つから捉えて、その現状や将来性を明らかにするというのが基本テーマだからです。



それぞれについて、簡単にみておきます(前期に企業行動論の授業を履修してくれた人にとっては、確実に「耳タコ」な話ですw)。


企業は、根本的に〈誰か〉の欲望を充たすために存在します。欲望というとどぎつく聞こえますが、「こんなのがあったらなあ」とか、「あんなのがほしいなあ」とか、そういったふうに感じることすべてが欲望です。つまり、企業は他の誰かが抱いている(気づいていなくてもいい。というか、気づいていないほうが多い)欲望を充たすようなモノやコトを創り出し、提供することで、何らかの対価を受け取り、その創出や提供にかかわった人や組織に対して、貢献に対する分配をおこなうという流れやしくみをもっているわけです。



このうち、「他の誰かが抱いている欲望を充たすようなモノやコトを創り出し、提供する」というのが〈価値創造〉です。どこで、どんな原材料を調達するのか、どんな機械や設備を準備しなければいけないのか、どうやって製造していくのか、あるいはどんなサービスを提供していくのか、そしてそれをどう「欲しい!!」と感じてもらい、届けていくのか。こういった一連の流れを価値創造過程、しくみを価値創造メカニズムと呼んでおきましょう。調達や生産、販売、広告など、企業でなされているさまざまな活動は、現実のところ、しくみや流れとしてつながっています。企業の根幹部分が、これです。



〈価値創造〉をしていくためには、ほぼまちがいなく、さまざまな人や組織(=まとめて活動主体と呼んでおきます)とのやり取りを通じて、必要な資源などを準備しなければなりません。このやり取りにおいては、必要な資源を手に入れるために、相手の活動主体が求めるモノやコト、あるいはそれを得るための手段としてのおカネなどを提供する必要があります。これが〈価値交換〉です。一般には、「取引」と呼ばれます。この価値交換に参加する活動主体を「ステイクホルダー」といいます。具体的には、顧客や従業員、取引先、地域社会、出資者(株主など)、債権者、自治体や政府などがあります。



〈価値創造〉と〈価値交換〉、いちおうは別物ですが、実際には密接に結びついています。この2つを結びつけるのが、〈ビジネス・リーダーシップ&マネジメント〉です。〈企業者職能〉という表現もあります。〈企業者職能〉という概念はひじょうに多様で、なかなかはっきりとした答えはありません。ただ、ここではペンローズ(Penrose, E. T.)を参考にして、

(1)環境を描き出す

(2)主観的な事業機会を描き出す

という2つの点に絞っておきたいと思います。


(1)は自分あるいは自社を取り巻いている状況を見定めるということであり、最終的にはどんな欲望が顕在・潜在しているのかを捉えるということにつながります。(2)は(1)を踏まえて、どうすれば見定めた欲望を充たすことができるのかを見出していくというのが、課題となります。これによって、〈価値創造〉の基本的な姿がみえてきます。また、そこにどのような〈価値交換〉が生まれてくるのかも、浮かび上がってきます。いわゆる「企画」や「プロデュース」といった活動は、ここから出発するといえるでしょう。



さらに、〈価値創造〉〈価値交換〉を実践していく際には、「何のために、これをやるのか」「いつまでに、どうやって、これをやるのか」などに対する、自らなりの答えが必要です。ここに、企業理念(=存在意義の明確化)や企業政策(=目標や方針)が生まれてきます。さらには、実際にやっていくための制度やルールの設計(=企業体制や組織構造の設計)、メンバーの考え方や判断基準などの方向づけ(=企業文化の醸成)といった課題も浮かび上がってきます。これらを〈ビジネス・リーダーシップ&マネジメント〉と、まとめて呼ぶことにします。



つまり、この企業者職能やビジネス・リーダーシップ&マネジメントによって、価値創造や価値交換は基礎づけられ、方向づけられ、動かされていくわけです。すぐれた企業(や、それをうまく結びつけていく企業)は、この3つがしっかりとかみ合っています。そうしたときに、いわゆる企業の〈ブランド〉が構築されると考えられるのです。


こういった企業の捉え方に立脚して、すぐれた企業・おもろい企業(いわゆる「会社」でなくてもいいし、企業のネットワークやコラボレーションでもいい)の魅力やすごさを、プロモーションしていくというのが、山縣ゼミの活動テーマです。



企業と大学とのコラボ(硬い表現でいうと「産学連携」)やインターンシップは、ややもすると「やったった!!」で終わってしまうことも少なくありません。もちろん、「やったった!!」というのは、「やりきった!!」ということですから、すごく大事なことです。



ただ、せっかくやるなら根本から考えて、そのおもしろさ、楽しさ、魅力を鮮やかに表現してみたいとも思うのです。そして、可能ならば、許されるならば、そのプロモーションのプロセスのなかで、そこ(=企業)の価値創造や価値交換を一緒に描き出す=デザインするところまでに踏み込んでみたいとも思うのです。



簡単ではないことは十分に承知しています。でも、どうせなら、学生のうちに「楽しみながら学び、考え、(しんどいこともあるかもしれんけど)楽しみながらやってみる」という経験を積んでほしいのです。



ということで、今年度から企業プロモーションプロジェクトを始動させたわけです。できれば、次年度はもっと企業の範囲を拡げて、やってみたいなと思っています。


企業行動論っていう授業をやってるくせに、もともと企業という存在にほとんど興味のなかった私がワクワクしてるんやから、おもしろいのはまちがいないです(笑)


来年度、こういうことをやってみたいと感じている近畿大学経営学部2回生のみなさん、ぜひ秋から始まるゼミ募集で、山縣ゼミにご応募ください!!



そしてプロモーションされてみたいと思ってくださる企業の方々、ぜひこのプロジェクトにご参加ください!!

Masayuki YAMAGATA Lab.

近畿大学経営学部 山縣正幸ゼミのページ。 テーマは「価値創造のデザイン:さまざまなステイクホルダーの期待を満たすために」 ミッションは「学びも遊びもガチで」