山縣ゼミって、何してんの?
【基本テーマ】
企業行動論・企業発展論 ―価値創造をデザインする―
【キーワード】
企業発展(or 組織体の発展)
価値創造+価値交換=価値動態(Value Dynamics)/ 価値循環
ビジネス・リーダーシップ
ステイクホルダー
サービスデザイン
意味のイノベーション
価値創造デザインプロジェクト
山縣ゼミでやること。やれること。やりたいこと。
ゼミというのは、比較的少人数で2年あまりにわたって、あるテーマや考え方に即して「考え」「実践し」「力をつけていく」場です。当然、ゼミによって「何をするのか」「どんな考え方をベースにするのか」などは、異なります。
山縣ゼミのミッションについては、別のところに書いてますので、それをご覧ください。一言でいうと「学びも遊びもガチで」。
じゃあ、具体的にどんなことをするのか。ここでは、学びに関して紹介したいと思います。なお、「今やっていること」と「これからやっていきたいこと」の両方が含まれてます。
(1)基本的な考え方を身につける&論理的に考え、表現する力を身につける
これは、山縣ゼミに限られたことではありません。ただ、うちのゼミでは、ここを大事にしています。なぜなら、これができるかどうかは、仕事ができるかどうかと直結しているからです。最初のうちは、なかなかうまくいかないかもしれません。でも、何度もやっていくうちに身についてきます。その集大成が卒業論文です。
(2)企業の魅力・強み・凄さをクリアにし、それを表現する
これは、2016年度から実施している〈企業プロモーションプロジェクト〉の内容です。2017年度に展開している〈価値創造デザインプロジェクト〉でも受け継がれています。詳しくは、スクロールして下をぜひお読みいただきたいのですが(↓の山縣ゼミでの基本的な考え方・捉え方)、企業の価値創造と価値交換の相互作用=価値動態を明らかにすることで、その企業がなぜ凄いのか、どんな強みを持っていて、それがどう発揮されているのかを浮き彫りにします。そして、それをイベント企画や動画制作などのプロモーションとして表現します。現状での魅力や強み、凄さを表現すると同時に、その将来的な可能性をも表現していくことをめざします。
(3)企業の価値動態をデザインする
これは(2)と連動していますが、その企業の魅力を表現し、伝えると同時に、対象企業の方々といっしょに将来の価値動態をデザインするという試みも進めていきたいと考えています。その企業が、これから先も持続的に発展していくためには、どうしていく必要があるのか。これを企画やプロモーションをつうじて考え抜き、その将来像を提案できるようになってほしい、そう思っています。
もちろん、これ以外にも「山縣ゼミで、こんなことできるん?」とかいった疑問もあろうかと思います。いつでも、聞きにいらしてください!
山縣ゼミでの基本的な考え方・捉え方
~価値創造をデザインする~
1. 誰かの欲望を充たして、自分の欲望も充たす=価値創造。
人間は、欲望をもって生きています。欲望をもっていない人間はいません。欲望というのは、基本的に「今、それは充たされていない」という状況で発生します。それを充たすのが、製品であったり、サービスであったりするわけです。これを求めている人(や組織)に対して創出・提供し、その欲望を充足することで、自ら求めている何かを得る。この一連を〈価値創造〉と呼びます。
ちなみに、欲望といっても自分自身の直接的な不足や不便を充たしたいというものばかりではありません。さまざま議論があるところなので、ここで深入りはしませんが、孔子が〈仁〉ということばで、孟子が〈惻隠〉ということばで、さらにアダム・スミスが〈sympathy(同感 / 共感)〉ということばで表現した心裡状態は、人間に「他者を思いやる」という姿勢が―もちろん、個人差はあるとしても―存在していることを示唆しています。したがって、ここでいう欲望とは、「自分自身の不足や不便を直接的に充たしたい」という欲望と、「他の誰かの不足や不便を充たしたい」という欲望との2つからなっていると考えておきます。実際には、この2つが組み合わさったかたちをとることも少なくありません。〈価値創造〉ということばを定義するにあたって、上のように述べたのは、そういった欲望の多様な特質を念頭に置いています。
2. 企業=価値創造を実現するしくみ。
この〈価値創造〉をおこなう最重要な活動主体のひとつが、企業です。企業は、顧客が欲しいと望むであろう商品(製品やサービス)を創造し、提供することで、その生存が可能となります。これを実現していくプロセスが「価値創造過程」です。価値創造過程においては、さまざまな資源や能力、さらにはとりまく環境の諸条件をいかに活用し、さらに展開していくかが重要になります。
これを描き出したものが、下の図です。どのような製品やサービスを創出・提供するのかによって、必要となる実質財や知識財の内容・量、さらに名目財の量には違いがあります。実質財・名目財・知識財というのは聴き慣れない表現ですが、図からもわかるように、名目財とは「資金など、他の実質財や知識財を手に入れるための手段=名目的な財」を、実質財とは「何らかのかたちで、製品やサービスへと姿を変える財」を、そして知識財とは「名目財や実質財を動かしていくための知識や情報、スキル、ノウハウ、さらにはブランドなどの無形の財」をさしています。
これらをどう獲得・活用・展開していくのか。これが、価値創造にとってもっとも重要なポイントになります。したがって、広い意味での経営学(企画やマーケティング、生産、会計なども含む)にとって必要不可欠な諸活動が、ここで結びつけられることになります。
この価値創造過程や価値創造メカニズムは、当然ながら企業によって異なります。ここのところをちゃんと捉えることができるかどうかは、すごく重要です。
3. 価値創造に必要な存在としてのステイクホルダーと、価値交換関係。
この価値創造過程において活用される財=資源や能力、諸条件は、もとから企業に備わっているわけではありません。企業というのは、人間によって構築された「人為的存在」だからです。この人為的な存在としての企業が、必要な資源や能力、諸条件を獲得するためには、相手が必要です。この相手こそが「ステイクホルダー」であり、このステイクホルダーとのあいだで「交換」が発生するのです。これを「価値交換関係」と呼びます。
この価値交換関係も、企業によって異なります。より厳密に言えば、価値創造過程や価値創造メカニズムによって異なります。その企業、あるいは事業にとって、どんな財が必要なのか。それによって、誰が「ステイクホルダー」となるのか決まってくるからです。
下の図は、株式会社企業を想定した一般的なステイクホルダーと企業との価値交換関係を示したものです。クラウドファンディングをベースにした資金調達などであれば、株主が存在しないというケースもありえます。また、価値交換の内容それ自体も、企業や事業によって大きく異なってきます。ですので、これはあくまでも基本的な枠組というくらいに考えてもらえるとうれしいです。
大事なのは、次の4.でも書きますが、価値創造過程と価値交換関係を結びつけて考えるという点です。
4. 企業は価値創造と価値交換のセット=〈価値動態:Value Dynamics〉。
そもそも〈価値創造〉それ自体が、〈価値交換〉を含んでいます。というのも、〈価値創造〉は他者の欲望を充たし、それによって他者から得られる何かによって自分の欲望を充たすという活動を含んでいるからです。したがって、〈価値創造〉と〈価値交換〉はセットなのです。企業においては、「価値創造過程」と「価値交換関係」が相互に絡み合いながら動いています。これを「価値動態」と呼んでおきましょう。しかも、この価値動態は、他の企業などとの「競争」のなかで展開されています。
この「価値動態」を、どれだけクリアに描き出せるのか。これがひじょうに重要です。「描き出す」というのは、〈現状〉を描き出すのと同時に、〈将来〉を描き出すということも含まれます。山縣ゼミで重視するのは、ここです。価値創造デザインプロジェクトでも、この点を踏まえたうえで企画やプロモーションを展開するというのがベースになっています。
この「価値動態」こそが、それぞれの企業の魅力や強み、凄さの源です。
その点を踏まえたうえで、「どうやって売れる商品を開発するか」「どうやって商品の魅力を顧客に伝えるのか」「どうやって魅力的な商品を効率的に生産するのか」などなど、マーケティングや生産、人的資源管理、財務、さらにそれらを実行するための枠組としての経営戦略や組織構造など、さまざまな課題が浮かび上がってくるわけです。
しかも、これらの諸活動は、企業だけでおこなわれているのではなく、さまざまなステイクホルダー、たとえば顧客や従業員、取引先、地域社会などとの価値交換を含んでいます。価値創造を成功させようと考えるなら、価値交換関係をうまく構築していく必要があります。
ゼミの最初では、実際の事例分析などを通じて、この考え方を身につけてもらい、価値創造デザインプロジェクトではそれを活かして、実際の企業の魅力や強み、凄さを明らかにし、商品企画やプロモーション活動へとつなげていきます。
5. 価値動態を基礎づけ、方向づけ、促進する=ビジネス・リーダーシップ&マネジメント。
さて、価値動態を考えるうえで、一つ大事なことを書き忘れていました。それが、ビジネス・リーダーシップ&マネジメントです。上にも少し書きましたが、価値の創造も交換も、誰かがそれを動かしていかなければなりません。たとえば。
(1)どこにどんな欲望が存在しているのかを見出し、かたちにしていくこと。
(2)そのために、自分たちがやっている、あるいはやろうとしていることの〈意義〉をはっきりさせること。
(3)具体的に、「何を」「誰に対して」「どのように」やっていくのか、目標や方針を設定すること。
(4)目標や方針を実現していくために、ヒトやモノ、おカネなどのさまざまな資源をどう振り分け、どう活用していくのか、あるいは、そこで活動するヒトの自由範囲をどう設定するのかといった、ルールの設計。
(5)さらに、参加メンバーがともに活動していくために、どんな価値観や判断基準を共有していってほしいのかという風土や文化の方向づけ。
ここに書いたことも、一つの例です。ただ、企業や事業をながく続けていこうと思ったら、こういった点を明確にしていく必要があります。つまり、価値動態をデザインし、展開していくためには、このビジネス・リーダーシップ&マネジメントが不可欠なわけです。これらをひっくるめて、プロデューサーシップと呼んでもいいかもしれません。価値創造と価値交換を具体的にデザインしていくというのは、このビジネス・リーダーシップ&マネジメント、あるいはプロデューサーシップという考え方・ものの見かたに立脚することでもあります。
企業プロモーションプロジェクトにおいても、この点はひじょうに大事です。これをかたちにしていく際に、〈デザイン思考〉を活かします。これについては、ゼミのなかで身につけていってもらおうと考えています。